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報告  

2007年度の調査は,予定通り終了しました.調査許可申請に関する終了報告書は,2008年3月に上士幌自然保護官事務所へ提出しました.主な調査概況は以下の通りです.

気象観測:ヒサゴ沼周辺で気象観測(気温,風速,降水量,日射量)ならびに積雪・融雪状況を計測しました.2007年の気温は,6月前半が暖かく,6月後半から7月前半はほぼ平年並み,7月中下旬は例年より2-3度低くなりました.8月はほぼ平年並み,9月は例年より暖かい傾向がありました.降水量は平年よりやや少なめで,特に7月の降水量は例年の半分以下でした.

開花結実状況調査:ヒサゴ沼ならびに五色ヶ原周辺でシーズンを通して高山植物の開花状況と結実状況の調査を行ないました.ほぼ例年通りの開花・結実パターンが認められ,花粉媒介昆虫であるマルハナバチの個体数が急増する7月下旬に開花した植物で結実率が高まる傾向が明らかとなりました.

温暖化実験:2001年より7年間継続した開放型温室(OTC)を用いた高山植物の温暖化実験は,2007年9月で終了しました.実験に用いたOTCはすべて撤去しました.実験で明らかになったことを以下に列挙します.

  1. OTCを設置することにより,日平均気温は約2度上昇した.
  2. 温暖化に対する植物の応答は,雪田植物群落より風衝地植物群落でより顕著であり,応答時間は標高の高い群落よりも低い群落で短かった.
  3. 温暖化により,高山植物は伸長成長が促進され,地上部バイオマスが増大する傾向にあった.特に風衝地群落では,地上部推定バイオマスが温暖化処理により約2倍に増えた.
  4. 温暖化に対する高山植物の応答は,種や場所により異なっていた.低標高風衝地群落では特に低木植物(クロマメノキやウラシマツツジ)の成長が促進されたが,高標高風衝地群落では禾本類(タイセツイワスゲなど)の成長が促進された.雪解けの早い雪田群落では,禾本類(ミヤマクロスゲ)が増加し,広葉草本(ハクサンボウフウなど)が減少する傾向が見られた.一方で,7月下旬以降に雪の解ける雪田群落では,温暖化の影響はほとんど見られなかった.
  5. 以上の結果より,温暖化に対する高山植物の応答は生育環境により多様であると予測された.森林限界付近の低標高風衝地では低木群落へと移行し,稜線付近の風衝地では乾燥草原へと移行する傾向が示された.また,比較的雪解けの早い湿性お花畑は,単調な草地へと移行する可能性が示された.

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